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●長崎支所長だより「長崎支所長:田添」
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧のみなさま、いつもありがとうございます。
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
令和初めての正月も20日間ほど過ぎましたが、みなさまにおかれましては、どのように輝かしい新年を迎えられたでしょうか。
大晦日はかなり冷え込みましたが、その後は例年になく暖かい日が続き、北海道をはじめ北国においては雪が降らず、各種イベントが中止になったりスキー場がオープンできないところもあると聞いていまして、その影響が心配されます。
海では、地球温暖化に伴う水温上昇などによると思われる、鮭やスルメイカ、サンマなどの不漁が深刻化していて、北部九州でもサバなどの水揚げ減少により、様々な影響が出ており、今後も心配されます。
また、「海のゆりかご」と言われ、魚介類などにとってなくてはならない「藻場」も大きく変わってきており、アラメ・カジメ場からホンダワラ類主体のガラモ場への変化、四季藻場(一年中藻場を形成)から春藻場(春から初夏のみ形成)への変化に加え、藻場が著しく減少する磯焼けが進行拡大し、例えばアラメ・カジメなどを餌とするアワビの水揚げ量は、ピークの頃の1/20まで減少するなど、魚介類に大きな影響を与えています。
さらに、大型台風などによる甚大な風水害被害も増大しており、それらへの対策が強く求められているところです。
昨年、水産業の成長産業化に向けて水産政策の大きな改革がなされ、これから本格的に着手していく中、この海の環境や水産資源の状況の変化及び自然災害の大型化・頻発化は、障害になると思われますが、水産関係者が英知を結集し、一体的かつ積極的に取り組むことにより、必ずやこれら障害などを乗り越えて、我が国の水産業の振興と漁村の維持発展を実現していけるものと考えています。
当センターは、この水産政策の改革の取組にあたり、国、都道府県、市町村が実施する漁港・漁場・漁村づくり及び水産環境の保全創造づくりを技術的に支援していくことを使命として、各種業務に日々取り組んでいるところですが、自治体、特に市町村において技術職員が減少していることから、水産庁や漁港・漁場等に関連する他の団体と連携して、さらにそのバックアップを強化していくこととしております。
また、最近の自然災害の大型化・頻発化に対応すべく、昨年度から市町村との災害復旧支援協定を締結しており、今後もさらに進めていくことにしております。
また、大きく進行する磯焼け対策にも、産学官民連携して取り組んでいくこととしています(磯焼け対策については、次回のコラムに掲載予定です)。
これら業務などを通じて、我が国の水産業の振興と漁村の発展、ひいては漁業者など関係者の方々が笑顔でこの一年を過ごしていただくことに少しでも寄与できるよう、職員と一緒にがんばっていきたいとの思いですので、関係のみなさま方にはどうぞよろしくお願い申し上げます。
今年一年が、皆様にとりまして素晴らしい一年でありますことを、心からお祈り申し上げます。
令和2年1月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 田添 伸
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●長崎支所長だより「長崎支所長:田添」
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧のみなさま、いつもありがとうございます。
7月末の第4回に続き約1か月ぶりの第5回目になります。当センターは、全国の都道府県や市町村など地方自治体などが行う漁港・漁場・漁村づくりの円滑な推進の支援を目的としており、長崎支所は長崎県主体に九州・沖縄を担当していることから、これら地域に出張することが多いのですが、漁場関係は長崎支所が主に担当していることから、最近は全国的に出張する機会が少しずつ増えてきました。
先月の第4回では、奄美群島の会員市町を訪問したことをご報告させていただきましたが、今回は東北の岩手県と宮城県の一部を訪問してきましたので、そのことをご報告させていただきます。
今回お話があったのは、岩手県庁からで、東日本大震災により甚大な被害を受けた漁港や魚市場などの陸上施設の整備は、防潮堤を除き概ね終了していますが、沖合の魚礁については、ほぼ手付かずとのことで相談を受け、協議してきました。
協議の後、折角の機会なので、当センターの本部と松江支所が受注している工事の復旧状況などを視察するとともに、三陸地方で水揚げされる魚を直接見るため、宮古魚市場(岩手県)と気仙沼魚市場(宮城県)も早朝から見学してきました。
北は田老漁港から、大槌漁港、釜石漁港、大船渡漁港、大島漁港(気仙沼市)を視察しましたが、それぞれの漁港により防潮堤の高さはまちまちで、一番高い田老漁港は20mもあり、圧倒される高さでした。またその田老漁港や大槌漁港では、魚市場や荷捌き所など防潮堤より海側で仕事をする方々が少しでも早く逃げられるような高い道路兼高台が隣接して整備されていました。
一方で気仙沼漁港は高さが3〜4m程度と低く、その壁の一部にはアクリル板のような透明なものが埋め込まれ、漁港や魚市場などが見えるように工夫された構造のところもありました。
このような整備を見ると、いかに津波が高く破壊力が強かったかを思い知らされるとともに、漁港によっては圧迫感を少しでも減らすことを優先するなど、同じ防潮堤でも様々な形での整備がなされていることも知りましたが、いずれにしても一日も早い完工を願わずにいられませんでした。
今回の用務の主目的が魚礁関係であることから、宮古魚市場と気仙沼魚市場では、水揚げやセリ・入札状況を見学してきました。
宮古魚市場は、優良衛生品質管理市場として認定された施設で、基本的にはタブレットによる入札で取引され、結果もすぐに大きな画面とタブレット両方で見られるという電子化が進んだ市場で、とても感心しました(他には大船渡魚市場も同様の取引です)。
当日は、定置網のワラサ(小型のブリ)が一番多かったのですが、さすが三陸地方、長崎では見られないマダラ、ドンコ(エゾイソアイナメ)、キチジ、ホタテ、ホヤ、それにマンボウの内臓なども水揚げされていました。マンボウの腸とホヤなどを前夜いただきました。特にマンボウの腸は、初めてで最初は何なのかまったくわかりませんでしたが、何とも言えない食感と美味さでした。
気仙沼魚市場は、生鮮カツオとメカジキの水揚げは日本一、それにサメ(フカヒレは日本一)とサンマの水揚げも有名な大きな魚市場で、水揚げ金額では三陸地方では一番、全国でも6位です。
一般の方はデッキからしか見学できないとのことだったので、入口から見ていたら、関係者の方のご配慮により、幸いにも完成したばかりの閉鎖型の高度衛生施設の中を見学させていただきました。その中では、メカジキやサメなどが大量に水揚げされていて、メカジキの一番大きなものは300kg超えで、さすが日本一だなと思いました。
他の施設ではカツオとワラサなどが水揚げされ、入札も行われていましたが、その見学の途中で昨年鹿児島魚市場の見学でお世話になった同級生(今年6月から気仙沼魚市場で勤務)にバッタリ出会い、さらに学生時代大変お世話になりぜひ会いたいと思っていた先輩にも会え、もう一つ加えると最初に説明していただいた方が大学の同級生かつ同じ学科だった(お互い一切気が付きませんでした)ことを後で教えてもらい、ビックリの連続でした。
この気仙沼では、前夜にサメの心臓(刺身)を初めて食べましたが、これもなかなかの美味で、前夜のマンボウといい、こちらに来られる機会がありましたら、是非お勧めしたい一品です(写真は行かれた時の楽しみということで割愛します)。
この見学の他に、宮古での夕食の際同席していただいた方のお一人が、JAMSTEC(海洋研究開発機構)の最新の研究船「かいめい」の調査責任者であったことから、とてもラッキーなことに翌朝見学させていただきましたが、最新の技術(例:操舵がないなど)と機器類などのオンパレードで驚きの連続でした。
長くなりましたが、今回の岩手県と気仙沼の出張では、復旧の現状や水揚げ等の実態を知ることができるとともに、予想外の見学やいろんな奇遇もあったりして、とても有意義なものになりました。
今回お会いしお世話になった方々に深く感謝するとともに、一日も早い完全復旧と元のように活気ある町に戻ることを強くお祈りしたいと思います。
令和元年9月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 田添 伸
●長崎支所長だより「長崎支所長:荒川」
2018.4月版
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧の皆さま、いつもありがとうございます。
平成30年度が始まりました。支所では、昨年度も例年と変わらない業務を行うことができました。ご依頼下さった、また、お声がけ下さいました皆さまに、感謝を申し上げます。
さて、3月と4月は別れと出会いの季節です。お世話になっている県や市町などにおかれましても、沢山の方が異動されました。転出された方の新天地でのご活躍をお祈りいたしますとともに、新しく私どもの担当になられた方には、一層のご指導とご鞭撻をお願いいたします。
当支所でも昨年度の末に松尾照久専門役が退職されました。そして、4月1日には桑本淳二漁場開発部長を調査役に、石丸聡設計第二課長を漁場開発総括課長に任命するとともに、薩摩憲治技術課長を漁港漁村部次長に昇任させていただきました。さらに、本年水産大学校を卒業した和泉圭一さんを調査課の技師に迎え、今年度はこの体制で業務に臨むこととなりました。皆さま方におかれましては、どの様な顔ぶれになったのかを見に、事務所までお立ち寄りいただければ幸いです。
ところで、昨年発生したラニーニャ現象により今年の冬は寒さが厳しく、大雪にも見舞われました。この状態も夏までには解消されると予想されているようですが、エルニーニョやラニーニャといった異常気象が何時も起こるような最近の気象変動に、世界中が気忙しい対応を迫られているような気持ちがしております。
冬が寒い年は、暖かくなると同時に、何時もよりも早く桜が開花すると言われています。長崎半島ではピンクのソメイヨシノに鳥たちが群れ遊び、事務所の前の水辺の森公園では白いオオシマザクラが木々の緑を際立たせています。
一方で、海の世界ではブリやヨコワの好漁が報道されましたが、その他の魚では苦戦が続いているようです。気象や水温などの環境変化によって変動する水産資源を、いかに管理して持続的な水産業を営むか、漁業者さんや資源を研究している方々は頭を悩ませておられることと存じます。
第一次産業に関係している私どもは、天候に抗うことは難しいのですが、気象や海象が何時もと違っても安心して暮らしていけるよう、今年度も努力を積み重ねて参りたいと考えております。海の環境変化だけでなく、何かお困りのことが生じましたら、気軽に支所までお声がけ下さいますよう、よろしくお願いいたします。
昨年度に引き続き、30年度の第1回も魚鷹(うおたか)とも言われるミサゴで〆させていただきます。この鳥は大空から海にダイブして魚を狩ります。水産資源が増えれば、我々人間も彼らも、より良い生活を営めるようになります。本年度も水産資源の増大や安全で安心な漁村社会の確立にお役に立てるよう、努力してまいりますことをお誓い申し上げます。
平成30年4月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 荒川 敏久
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過去の「長崎支所長たより」はこちらから
2010.10〜2015.3
2015.4〜2016.3
2016.4〜2017.3
2017.4〜2018.3
●長崎支所長だより「長崎支所長:荒川」
2018.5月版
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧の皆さま、いつもありがとうございます。
5月になりました。今年も昨年に引き続き、1日と2日を休めば9日連休です。計画的に休暇を取られ、リフレッシュされている方も多いと思います。
とは申しましても、この時期はアワビやウニの潜水漁業が盛んに行われています。新鮮で美味しい魚介類を届けるために祝祭休日に関係なく頑張っておられる、漁業者の皆さまに感謝いたします。
さて、今年はラニーニャ現象で冬が寒かった分、桜が例年より早く開花しました。また、開花後には暫く雨が降らなかったことから、長い間花見を楽しむことが出来ました。そして桜が咲いたと喜んだのは人間だけではありませんでした。冬の間空腹に耐えていた鳥たちも一斉に花に集まって来ました。
中でも目立ったのはメジロでした。桜のピンクに緑の体が映えます。小さな鳥で目の周りの白いリングも愛らしく、鳥写真の愛好家は桜に集まるメジロを「サクジロー」と呼んで愛でています。今回の写真はカワヅザクラで遊ぶメジロです。頭を花に突っ込んで花粉を食べたり蜜を吸ったりしていました。
一方、ヒヨドリは困り者です。結構大きな鳥ですので、サクラに近寄ってくる他の小鳥を追い払ってしまいます。また、花ごと啄ばんで落としてしまうので、折角咲いている桜が勿体無いと思うこともしばしばありました。写真はソメイヨシノで睨みを利かせているヒヨドリです。縄張り意識があるのでしょうが、満開なんだから独り占めしなくても良いのにと感じながらシャッターを切りました。
話は代りますが、今春も多くの人から余り良い漁はなかったとの話をお聞きしました。例年より冬が寒い年は海藻が良く育つので、藻場を棲家にする多くの魚介類は良く育つに違いないと単純に考えていたのですが、海洋環境と水産生物との関係はそれほど単純ではないと、改めて気付かされました。
近年、従来は異常気象と言われていたエルニーニョ現象やラニーニャ現象が次から次へと起こり、毎年の様に海洋環境が変化していると感じています。
私は、水産業を守り振興するためには、従来とは異なってしまった環境に対応するための知識と技術が必要だと考えています。環境が悪くなったのだから、海藻が減ったり、魚が居なくなったりするのは仕方ないと諦めるのでなく、藻場や増殖礁の造成、またマウンド礁や人工魚礁の設置など、現在開発されている様々な手段を駆使して水産業を守り育てる必要があると考えています。
私ども長崎支所は、水産基盤整備事業の知見と経験をもった職員が、皆さま方の取り組みをお手伝いさせていただきます。何か疑問に感じることや気がかりなことがございましたら、気軽にお声がけ下さい。一緒に考えさせていただきたいと考えております。
今回は大村公園の八重桜で〆させていただきます。桜も人が精一杯お世話をすれば、こんな立派な花になって恩返ししてくれます。我々も海と海に棲む生き物の環境が良くなるよう、出来る限りの努力を続けて参りたいと考えます。
平成30年5月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 荒川 敏久
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●長崎支所長だより「長崎支所長:荒川」
2018.6月版
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧の皆さま、いつもありがとうございます。
早いもので6月になりました。梅雨の季節の到来です。我々にとっては迷惑な雨も植物には慈雨。この季節、長崎は初夏の花で彩られます。
今回は5月の花の中から、バラを紹介させていただきます。先ずはピンクのバラ、花言葉は「愛の誓い」だそうです。しかも1本だと「あなたしかいない」の意味が付け加わるので、独身の皆さまには是非その効果をお試しいただきたいと考えます。次に登場願ったのはアプリコット色のバラです。バラの花言葉の中にこの色のものを見つけることが出来ませんでしたので、似ているところでオレンジ色。「魅惑」とか「絆」の意味がありました。2本にすると「この世界は二人だけ」の意味が付け加わります。結婚が決まった、また結婚後の二人を祝うのに良いのではないかと考えます。
ここまで書いて、ロマンチック過ぎる書き出しになっていることに気付きました。職場のコラムに相応しくなかったかな、と反省です。
そこで、目を海に転じさせていただきます。海水温が上昇し、マグロ、寒ブリ、クエ等の大型魚が旬を外れたと嘆かれている方もいらっしゃると思います。しかし、長崎の魚は冬の大型魚だけではありません。キビナゴやイサキ等、初夏に旬を迎える魚がいます。春先に卵を生む魚たちが多い中で、これらの魚は梅雨時が産卵期。健康な子孫を残すために体に栄養を溜め込んでいますので、食味も一層良くなっています。その他にも、アジやタチウオ等は初夏から盛夏に美味しくなる魚です。そして、何時でも美味しそうに思えるタコもこれから旬を迎えます。地元の人なら夏魚の美味しさをご存知ですが、旅行に来られた方にも是非とも長崎の夏の魚を味わっていただき、目から鱗を落として帰っていただきたいと思っております。
さて、5月30日に、センターの理事会があり、本年度の総会提出議案等が決りました。総会開催日時は6月20日(水)の午後2時からで、1時間程度を予定しております。場所は東京都港区赤坂の三会堂ビルの9階です。また、例年同様、総会終了後に同じ会場で講演会を行います。今年のテーマは「スケッチからはじめるICT」。公立はこだて未来大学の和田雅昭教授が、海のICTについて詳しく話をされます。
会員の皆さま、そしてこのコラムを見て興味を持ってくださった皆さま、是非ご参集下さいますよう、お願いいたします。
途中で仕事の話を挟みましたが、今回は花の写真で〆させていただきます。5月のある日、庭で山アジサイを撮っていましたら、花アブが近寄ってきました。藻場と磯根動物ではありませんが、植物と動物の繋がりを思い返す機会を与えてくれました。
平成30年6月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 荒川 敏久
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●長崎支所長だより「長崎支所長:荒川」
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧の皆さま、いつもありがとうございます。
6月2度目の記事は退任のご報告になりました。拙文にお付き合いいただければ幸いです。
私は平成25年の5月に長崎支所長を拝命し、今月20日の総会で退任をご決定いただきました。5年間を振り返り、この間にお届けできた53回の「長崎支所長だより」を楽しく思い返しております。
月1回、写真入のスタイルで書き始めたのは平成26年の5月からでした。その1回目にはアヤメとシロサギ、アオサギに登場願いました。その後も花や鳥の写真を主体に、現場での調査活動や職員の結婚式、また、学会での発表の様子などを織り交ぜて、記事を書かせていただきました。 軽い読み物として楽しんでいると言われる方もいらっしゃり、それなりの役割は果たせたのかなとは考えておりますが、毎回、水産土木に関する話題が半分以下でしたので、趣味に走りすぎたきらいがあったと反省しています。
そこで、最終回は仕事の話を中心に書かせていただきたいと考えました。
在任した5年間、私の様な生物系の人間が土木工学の分野から水産業を考える機会をいただきました。現在も、水産業にとって最も重要なのは魚を獲ったり利用したりすることである、との思いは変わっていませんが、そのための環境整備には土木工学的な取組みが不可欠なことを知りました。俗に言うソフトとハードの一体化です。言い換えれば、どちらか一方だけでは解決できない課題も、硬軟2つの技術を組み合わせれば解決の糸口を見出せる、ということです。
(一社)水産土木建設技術センター長崎支所は水産基盤整備というハード事業を通じて、水産業の振興と漁村社会の安全・発展に寄与している組織です。そして、その中では水産生物を熟知した専門家がハード事業をどの様に運用しようかと、常日頃から考えています。長崎支所は随分と使い勝手の良い、利用し甲斐のある組織です。
これからも皆さま方の一員として、長崎支所を水産業の発展に向けた協同の一員に加えていただきますよう、お願い申し上げます。
そして、支所を支えてくれている職員の皆さんに感謝を申し上げて、最後のご挨拶に代えさせていただきます。
5年間ありがとうございました。
平成30年6月吉日
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 荒川 敏久
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●長崎支所長だより「長崎支所長:田添」
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧の皆さま、いつもありがとうございます。
就任の挨拶が遅れましたが、このたび、前任の荒川敏久支所長の後任として就任いたしました田添伸と申します。
先に開催された6月20日の総会の承認をもって、本部の常務理事兼長崎支所長として就任以来、早2ヶ月が経ちました。
県内の関係機関や市町などに就任のご挨拶に伺わせていただきましたが、久しぶりに訪れたところも多く、懐かしく感じつつも、やはり長崎県は島をはじめ津々浦々の景色が素晴らしいなとあらためて思いました。
長崎支所では、豊かな漁場や活力ある漁港・漁村づくりのため、最新の水産土木技術と機器を駆使して、県や市町などが実施する様々な漁港や漁場の整備事業について技術的なバックアップに務めているところでありますが、漁港・漁場は、まさに水産業の基盤であるとともに、水産業の振興や漁村社会の安全と発展に大きく貢献するものであり、その整備等における技術的バックアップの重要性をあらためて認識しているところです。
これからこの重要な業務に携わっていくことは、身の引き締まる思いでありますが、漁港・漁場整備の各種事業に精通し経験も豊富な長崎支所のメンバーとともに日々業務に務め、皆様方のお役に少しでも立てるよう尽力してまいりたいと考えておりますので、より一層長崎支所をご活用していただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
また、漁港管理者支援サービスの充実の一環として、「漁港管理者コンシェルジュ」をおき、皆様方の様々なお困りごとのご相談に応じていくことにしていますので、併せてこちらもご活用いただければ幸いです。
なお、今回は就任後初めてのコラムでしたので、仕事関係の話しだけでしたが、今後は仕事以外のこと(趣味の登山など)も含め、毎月支所長コラムを更新していきたいと思いますので、拙文ではありますが、お付き合いいただければ幸いに存じます。
平成30年8月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 田添 伸(たぞえ のぼる)
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●長崎支所長だより「長崎支所長:田添」
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧の皆さま、いつもありがとうございます。
支所長に就任してから2回目のコラムとなります。
前回は就任にあたってのご挨拶でしたが、今月は沖縄本島と久米島にサンゴの増殖関係の業務で出張しましたので、そのことに関することをお話したいと思います。
サンゴは、高価な「宝石サンゴ」(深い海域)と綺麗な環礁などを造る「造礁サンゴ」(浅い海域)の2種類ありますが、我々の仕事に関係するのは造礁サンゴです。
サンゴ礁は、多様な水産生物が生息し、豊かな漁場を育む場所であり、沖縄など暖かい海域での水産資源の増殖に大きな役割を果たしています。こちらの海域では海のゆりかごと呼ばれる藻場や岩礁などがその役割を果たしています。
そのサンゴ礁が、高水温による白化現象やオニヒトデによる食害などにより、海域によっては大きく衰退するなどのダメージを受けており、サンゴ礁の保全と再生が強く求められています。
この解決のため、水産庁や沖縄県においては、サンゴの大量の種苗生産、中間育成、移植などの増殖技術の開発や高水温や環境変化に強いサンゴの生産技術開発などに取り組んでいます。
これらの業務を、当センターが他の機関と一緒になって受託しており、当センターの久米島サンゴ増殖研究所では、これらの技術開発に日夜取り組んでいますが、特に6月前後の産卵時期は、昼夜関係なく作業や観察に多忙を極めることから、当長崎支所からもその応援のため職員を派遣しています。
しかしながら、私自身、サンゴの増殖に関してはまったく知らないこともあり、今回、現地に訪問し視察と勉強をさせていただきました。
サンゴは、成熟期(6〜8月。種により月が異なる)になると卵と精子を一斉に放出(満月の大潮の前後数日)し、受精後2日で幼生となり、数日から数週間の浮遊生活ののち岩などの基盤に着生し、ポリプと呼ばれるイソギンチャク状の形になり、骨格をつくりながら分裂・出芽を繰り返して、自分のクローンである新しいポリプをつくります。
その後、1年で群体の直径が1〜2cmに成長し、3年で直径約5〜10cm、4年で直径約15〜20cmの成熟サイズに成長します。
当サンゴ増殖研究所では、産卵から着生、そして直径15〜20cmの大きさまで成長させる過程において、高水温に強い種や生残率の高い種の選抜育種など、様々な研究とサンゴ育成に取り組んでいます。
この研究所の中心人物であり、この道10数年の中村上席研究員に、いろいろと教えていただきましたが、特に産卵時期は昼夜を問わず土日なしの大変な観察と作業の連続とのことで、頭が下がる思いです。
今回は、長崎支所から派遣している職員の作業の一つである着生した稚サンゴの数を数える作業を、半日程度だけですが体験させていただきました。顕微鏡写真に写っているのが稚サンゴですが、大きさは約1〜3mm程度(着生基盤が1cm角)であり、1ブロック100個(10×10)の基盤毎の稚サンゴを、ヘッドライトを上や横から当てながら計数していきます。老眼が進行中の私にとっては、特に1mmサイズは、海藻なのか死んだ稚サンゴ(白っぽくなります)なのか、まったくわからないときがあり、若手の和泉技師に何度も確認しながらの作業でしたが、途中からは慣れてきて一人で何とか正確に計数できるようになりました。
前日には、サンゴの村恩納村の役場に訪問し、サンゴの増殖にかける熱い気持ちを聞かせていただき、次に訪れた恩納村漁協のサンゴ施設でも、当方の増殖研究所が提供したサンゴを、海への移植を終えたばかりの若い女性の方(何と北海道出身)からも熱い思いを聞かせていただきました。
今回は、安室奈美恵さんの最終コンサートで那覇の宿がまったくとれなかったり、台風による船の欠航で、今回の目的地の一つ「美ら海水族館(サンゴの増殖等に力を入れている)」には、残念ながら行けませんでしたが、次に訪問する機会がありましたら、様々な施設にも訪問し、さらに勉強したいと思います。
今回はじめて久米島を訪れましたが、海が綺麗で地元の料理も最高でした。機会があれば、是非また訪問したい素敵な島です。
平成30年9月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 田添 伸
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●長崎支所長だより「長崎支所長:田添」
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支所長に就任してから3回目のコラムとなります。
初回は就任挨拶、前回はサンゴの話でしたが、10月といえば秋祭り、今回は長崎の秋の大祭「長崎くんち」をご紹介いたします。
長崎の代表的な大祭ということもありますが、実は長崎の氏神「諏訪神社」の神様(三基の神輿)が、くんちの間お下りになられ「お旅所」に御逗留されますが、そのお旅所が我々が勤務する「大波止ビル」の隣のくんち広場なのです。
くんちは、毎年10月7日〜9日の3日間開催され、私自身も毎年楽しませていただいていますが、仕事中、部屋に聞こえてくるシャギリや間近に見れる出し物と出店(写真)など、ほぼ1日くんち一色になるのは初めての経験でした。
ただ、いざご紹介しようとしたら、事の起こりをはじめ、ちゃんと知らないことが多いことに気付き、ネットなどで調べてみました。
「長崎くんち」は、近年「博多おくんち」、「唐津くんち」と並び日本三大くんちの一つと言われているそうですが、寛永11年(1634年)、二人の遊女が諏訪神社に謡曲「小舞」を奉納したことが「長崎くんち」の始まりだそうです。以来、長崎奉行の援助もあって年々盛んになり、中国やオランダなど異国趣味のものも取り入れられるようになり、その奉納踊りは国指定の重要無形民俗文化財にもなっています。
現在、奉納している踊り町は43カ町で7つの組に分かれ、当番は7年に1度回ってきます。そのため、ある町をどんなに見たいと思っても7年に1度しか見れませんし、全部の踊町を見ようと思ったら、何と7年かかることになります。
そのため、人気の踊り町、例えば今年の「椛島町(樺島町)のコッコデショ」が出るとなったら、びっくりするぐらいの多くの見物客になります。
踊り町は、6月1日になったら小屋入りし、それから本番までほぼ毎日練習をされるそうで、担ぎ手や根曳衆のほか、指導者や様々なサポートをされる町民の方など、それこそ町を挙げて練習や準備をされ、10月3日の庭見せ、4日の人数揃え(にいぞろえ)を経て、7日からの本番を迎えます。
これらにあわせて、特に「長崎っ子」は、ソワソワ、ウキウキし始め、当日になると仕事も勉強も手につかなくなるそうです。
私自身も、今年は幸いにもコッコデショのほぼ最後の練習を9月26日に間近に見れました(写真)が、その真剣さと迫力に圧倒され、とても感動しました。
ちなみにコッコデショの担ぎ手(36名)はとても人気があり、県内外からの応募者(今回は68名)からオーディションにより選ばれますが、重さ1トンの太鼓山を片手で受けたりするため、体力、精神力、根性が人一倍の人が集まり、毎日の厳しい練習を経て、本番の素晴らしい演技に繋がっているんだろうなと思います。
ところが、今年は台風25号が接近し、初日の一番大事な諏訪神社での奉納踊りができないのではと危惧されましたが、予想以上のスピードで過ぎ去ったため、曇り時々晴れの絶好の天気でスタートしました。これはおくんちの神様のおかげと思っていますが、関係の方々も、ほんとほっとされたと思います。
祭りの3日間は、出店も含め町の景色が大きく変わり、市内をはじめ県内外や最近増えた外国人など多くのお客さんたちで大変な賑わいになります。特に人気の長崎駅のかもめ広場など、無料で演技を見れる場所は大混雑します。
今年の踊り町は全部で7町(踊り物が2町、船の曳物が4町、担ぎ物が1町)でしたが、特に船は、御座船と川船(和)、唐人船(華)阿蘭陀船(蘭)という、まさに長崎の「和華蘭文化」を象徴した年であり、3日間とも天気に恵まれ、2日間が土・日と日程にも恵まれ、おそらくこれまでで最高の人出と見物客だったと思います。
各踊り町は、初日の諏訪神社の奉納踊りに始まり、お旅所など計4ヶ所での演技と庭先回りを中日、最終日と行いますが、演技にあわせて「ヨイヤ(良い哉)」、終わると「モッテコーイ(アンコール)」などの声が飛び交います。まさに見るだけでなくお客さんと一体となった楽しく感動的なお祭りです。
最終日の最後には、自分の町に戻り最後に演技を行い、挨拶やお礼をして終わるのですが、疲れきった身体に最後の力を振り絞って演技をされます(写真)。この姿はとても感動的で、ご覧になっていない方には是非お勧めです。ただ、深夜になることもあり、今回最後に見たコッコデショは、日にちを跨ぎ、何と1時でした。
そして、おくんちが終わってから2週間後の10月21日、今度は長崎魚市場で開催される「長崎さかな祭り」、毎年開催され今年37回目を数えますが、すっかり市民の行事として定着し、3万人を超える方々で賑わいます。
私が担当していた一昨年と昨年のみ、雨や台風による強風と天候に恵まれませんでしたが、今年は快晴の予報。私の日頃の行いを反省しつつ、今年は大いに盛り上がるだろうと期待しています。
平成30年10月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 田添 伸
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●長崎支所長だより「長崎支所長:田添」
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧のみなさま、いつもありがとうございます。
昨年6月に支所長に就任してから、数回だけ毎月コラムをアップしていましたが、昨年10月以降、ほんと久しぶりのコラムになります。
随分さぼっていたのだなと深く反省しつつ、これからは毎月でなくとももう少し頻度をあげて書きたいと思います。
早いもので私も就任して約1年経ちました。就任間もない頃はよくわからないこともありましたが、ひと通り経験したことにより、当センター及び当長崎支所の業務がほぼわかるようになりました。
当センターは、全国の都道府県や市町村など地方自治体などが行う漁港・漁場・漁村づくりの円滑な推進の支援を目的としていることから、都道府県、市町村、関係団体、関連のコンサルタント会社等の会員で構成されています。
そのうち都道府県が第1号正会員で、沿海の都道府県(39)はすべて会員になっていただいており、市町村は第2号正会員で66の市町村に会員になっていただいています。
今月、その2号会員である鹿児島県の奄美群島の6町村に訪問しましたので、簡単にご紹介したいと思います。
奄美群島には初めて訪問するため、事前に島や市町村の位置などを調べました。島の構成としては、代表的な奄美大島のほか、喜界島、徳之島、沖永良部島、世論島などで、すべて聞いたことがある島でしたが、驚いたのは市町村の数で何と12もあることと、初めて聞く町村もけっこうありました。
長崎県の大きな離島である五島・壱岐・対馬は、市町村合併が広域でかなり進んだため現在4市町(合併前は21市町)ですが、奄美群島は合併がほとんど進まなかったことを知りました。
今回は訪問しませんでしたが、十島村という小さな島で構成される村は、役場が鹿児島市(どの島からも便利)にあるという村であることも知り、長崎県も離島は多いですが、鹿児島県はさらにすごいなと思いました。
話を戻しまして、当センターの奄美群島内の会員は、奄美大島の龍郷町・瀬戸内町・大和村・宇検村、徳之島の伊仙町それに喜界島の喜界町です。
喜界島と徳之島は、私のイメージどおり、平らな地形でサンゴのリーフ(沖縄とは少し違います)があり、サトウキビ畑が広がる島でしたが、奄美大島だけは、島を縦走しましたが、山だらけでほぼ平地がなくサトウキビ畑を見ることもなく、ほんとに島なのかというぐらいの道路を何度も通ります。長崎県でいうと対馬にそっくりでした。
その地形を活かして、クロマグロの養殖はとても盛んで瀬戸内町(島の南端の町)では日本一のモニュメントもありました(県レベルでは、数年前から長崎県の生産が一位になりました)。
宿泊した奄美大島の瀬戸内町と徳之島の伊仙町では、漁協での水揚げと入札(伊仙町は準備段階)を見ることができましたが、やはり南の島、鮮やかな色の魚が多く見たことがない魚もありました(写真)。ほとんどが島内消費のことで、訪れた居酒屋さんでも提供されていました。その瀬戸内町の漁協の岸壁には、すぐそばを海亀が泳いでいてさすが南国だなと思いました。
漁法は、基本的に釣りが主体で、2〜3トンから6〜7トンぐらいの大きさの漁船が主体のようでした。町村の担当の方に聞くと、網を使った漁法はなく魚礁(浮き魚礁はあります)もそんなに整備されていないとのことでした。当長崎支所は魚礁や漁場整備関係の技術に強いことから、これから協力や支援できることがありそうに思えました。
また、伊仙町で唯一の前泊漁港を視察した際には、漁業者の方々がたまたま集まっていて、直接いろんな話(台風時の漁船の避難対策が大変など)を聞けてとても良かったです。
今回の訪問を通じて強く感じたのは、やはり直接行かないと実情がよくわからないということと、島や市町村こそ違え奄美群島の方々は人懐っこくていい方が多かったということです。
海が綺麗で料理も旨い奄美群島、行ったことがない方は一度訪問されたらいかがでしょうか。お勧めです。
令和元年7月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 田添 伸
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●長崎支所長だより「長崎支所長:田添」
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧のみなさま、いつもありがとうございます。
この4月1日で、本格的な令和年度である令和2年度がスタートしました。
前回の新年1月のコラムでも紹介しましたが、当センターは、国、都道府県、市町村が実施する漁港・漁場・漁村づくり及び水産環境の保全創造づくりを技術的に支援していくことを使命として、各種業務に取り組んでいるところです。
長崎支所におきましては、特に漁場整備関係を主体に漁港整備の業務などにも取り組んでおり、昨年度もすべて順調に業務を遂行することができました。これもひとえに各発注者をはじめ関係のみなさまのご支援・ご協力の賜と深く感謝申し上げます。
今年に入り、新型コロナが世界各国で感染拡大し、人類の生命・健康を大きく脅かすとともに、生活や社会・経済に多大な影響を与えおり、水産業もその影響を強く受けていますので、まず水産の立場から少し触れさせていただきたいと思います。
我が国では、感染拡大に伴い、特にクエ、アカムツ、アワビなどの高級食材は、消費量が減るとともに価格もかなり下がってきていると聞いています。一方で、スーパー商材であるブリやアジなどは、価格も下がることなく順調に売れていると聞き、少しほっとしていますが、全体的には、漁業者や様々な水産関係者に幅広く影響していると思われ、とても懸念しているところです。
これからこの拡大傾向がいつまで続くのかわかりませんが、水産関係者が英知を結集し、協力・連携し合って、この苦難を乗り越えていければと思っています。そのためには、少しでも早く、現在の拡大傾向の鈍化、そして減少傾向への転換、さらに終息に向かってほしいと切に願うばかりです。
さて、今回は「磯焼け」に関して話をさせていただきます。
前回のコラムで、藻場と磯焼けの話を少しさせていただきましたが、全国的に藻場の変化や減少が続いており、藻場が形成されない磯焼けも進行しており、特に長崎県内は深刻な状況になっています。
地球温暖化に伴う水温の上昇が大きな要因の一つであり、他には栄養塩不足、光不足、浮泥なども要因と考えられていますが、現在特に問題になっているのが海藻を食べる植食魚介類による食害です。
海藻の生産量が魚介類が食べる量よりも少なくなると、そのバランスが壊れ藻場は減少し短期間で磯焼け状態になる場合もあります。
植食魚介類の代表的なものは、ウニ類とアイゴ、ブダイ、イスズミなどの魚類です。
ウニ類は、大量に発生しますが、潜水などによる駆除やウニフェンス設置などによる防御の方法があり、これら取組を継続的に実施している海域は、藻場が回復するとともに、卵巣がほとんど入っていない所謂「ヤセウニ」の身入りが良くなり商品として販売できるなど、相乗効果も出ています。
しかし問題は魚類です。アイゴ・ブダイ・イスズミなどの植食魚は、水温が低い冬場は海藻をほとんど食べないのに、水温上昇により冬場でも食べるようになったことから、特にアラメ・カジメ場(アワビなどの餌場にもなる)の衰退が進行したと言われています。
ウニは、上記のような方法で駆除や防御が可能ですが、植食魚類は、遊泳するため駆除や防御が難しくなります。
まず駆除ですが、一般的に行われているのが刺網やかごで、待ち受ける漁法としては定置網もあります。アイゴとブダイは、刺網とかごなどにより漁獲は可能ですが、価格が安いため漁業者があまり積極的に獲らないという面を持っています。
イスズミ(ほとんどがノトイスズミ)は、魚体も大きく食べる量がとても多く(アイゴ・ブダイの約7倍という報告もあります)、さらに集団で行動することから、藻場に対するダメージが最も大きい種類と言えます。そして、刺網では一度目は獲れても二度目以降はかかりにくく、絶食状態でも長く生きるなどの性質も持っています。また、冬場を除くとその独特の臭みにより、市場からも敬遠され、定置網などで大量に獲れたときは持ってこないでほしいとも言われる、漁業者から嫌われ、駆除するのにとても困る魚です。
次に防御ですが、藻場造成のための着底基質(海藻プレートあり)を小型のネットで囲んだり(大きな網は台風等の波浪により破損します)、小さな湾などを網で仕切ったりしていますが、ネットの外では食べられてしまい造成の効果範囲が狭かったり、仕切り網は隙間から入り込み結局食べられてしまうなどの問題があります。
魚類は、以上のように様々な課題がありますが、このままでは藻場は回復しないため、関係の漁業者や研究者などが一緒になって、知恵を出し合いながら各地で様々な取組がなされ、成果を上げているものがあります。長崎県におけるイスズミ対策として二つの成功事例を簡単にご紹介します。
1つ目は、五島市の崎山地区で、防御方法として仕切り網の設置とイスズミトラップ(仕掛け)を併設した事例です。
まずは、隙間ができやすい仕切り網の管理を徹底的に行い、侵入をかなり防いだこと、そして刺し網ではかかりづらいイスズミ対策として、トラップ(小型の生け簀網の下に侵入口を作り、網の中に活きたイスズミと餌となる海藻を入れたもの)により捕獲するなどの取組により、8年ぶりにヒジキを収穫できるようになったものです。この取組は、全国の協議会やシンポジウム(下記)で発表されましたが、しっかりした活動組織とリーダの熱意・積極的取組、研究機関の技術的支援が相まったことにより成功していると思います。
2つ目は、対馬市でのイスズミの食用化の事例です。
食用としてなかなか流通しないイスズミの鮮度管理法及び臭いの元となる内臓・血合いを素早く取り除く方法を確立するとともに料理方法の研究の積み重ねにより、イスズミメンチが全国大会の「第7回Fish−1グランプリ」のファストフィッシュ商品コンテスト部門で、見事グランプリを受賞されました(新聞記事は下記)。
この取組の中心人物である犬束さんは、とにかく熱意が半端なく「食べる磯焼け対策」として、市や組合長さんなども巻き込んでの積極的な行動力は素晴らしいの一言です。そして同じ漁協内の「鴨居瀬地区藻場保全組織」のイスズミの駆除活動と相まって、長崎水産業大賞の知事賞を、この組織と一緒に受賞されました。地域が一体となった取組は素晴らしいものであり、メンチ料理はこれがあのイスズミ(?)と驚かされる旨さです。これからは漁業者の嫌われものではなくなっていくように思います。
他にも成果を上げている事例はありますが、毎年開催されている「磯焼け対策全国協議会」、「シンポジウム里海保全の最前線」では、全国の成功事例が発表されています。
これらに共通することは、しっかりした組織に熱意と行動力のあるリーダー、そして周りのバックアップ、加えて継続した取組です。
磯焼け対策は、とても重要ですが、一方で水温上昇などに起因するものもあり、とても難しい課題でもあります。
しかし、紹介した事例のように、様々な努力の積み重ねにより、少しずつでも解決していけるものと考えています。
当センターの業務の一つとして、「藻場の保全と創造」がありますし、研究機関や行政、NPO法人及び当長崎支所のメンバーで構成するWGでも、藻場回復対策の検討を重ねていますが、これから藻場が回復し磯焼けが少しずつでも解消していくよう、微力ながら努めていきたいと考えています。
今回は、かなり長くなってしまい申し訳ありませんでしたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
あらためまして、本年度もどうぞよろしくお願いいたします。
令和2年4月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 田添 伸
●長崎支所長だより「長崎支所長:田添」
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所のホームページをご覧のみなさま、いつもありがとうございます。
今年に入り、新型コロナが世界各国で感染拡大し、我が国においても、全国を対象とした緊急事態宣言が出され、様々な自粛の要請などにより、生活が一変するとともに仕事のやり方も変わってきました。
そして今月14日に、最近の感染者の減少傾向なども踏まえ、39県において、宣言が解除されましたが、引き続き感染しないよう、また感染させないよう「新たな生活様式」が求められ、仕事に関してもテレワークなどの継続が求められています。
当長崎支所においても、先月の21日から基本的に一日交代のテレワーク体制に入りましたが、長崎港における大型クルーズ船の大規模クラスター発生とその乗組員が市内に外出していたとの報道を受け、23日から5月1日までは、最少人員の2〜3名の事務所勤務(他の13〜14名は、テレワーク等により在宅)で対応してきました。その後乗組員による市内感染の恐れがほぼなくなったことなどから、現在、21日から2日間だけ実施した基本一日交代のテレワーク体制に戻し業務を実施しています。
そして今月14日の宣言解除と15日の長崎県の対応方針を受けて、本日(18日)協議した結果、テレワーク(来週からは週1回程度)と時差出勤を継続することに決定しました。
長崎県は、県民みなさまのご努力などにより、先月17日以降一人も感染者が発生していませんが、宣言が解除されても、感染防止などのための「新たな生活様式」は継続していく必要がありますし、この中にはテレワークも入っています。また、専門家はこれから第2波、第3波が必ずくると言っています。
これから気を緩めることなく新たな生活様式を実践し、これまでのテレワーク体制の経験を踏まえ、様々な工夫をした対応を行っていきたいと考えています。
関係のみなさまにおかれましては、この間ご迷惑おかけしたかもしれませんが、ご理解を賜りますとともに、今後みなさまにご迷惑をおかけしないような体制で臨みたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今回は仕事の面だけでなく、この新型コロナへの私自身のプライベートの過ごし方についても、少しご紹介したいと思います。
私の住んでいる長与町は、長崎市に隣接する町ですが、すぐ近くにはみかん畑などを主とした里山が多く、そして大村湾にも面しているなど自然に恵まれていることから、雨が降っていないことが条件になりますが、平日は朝夕あわせて1〜2時間、近くの里山を散策しています。そして休日で用事がない時は、少し足を延ばして隣の諫早市(みかんで有名な伊木力地区など)や時津町などの里山を散策したり、県内の山(例年行っている県外の山へは自粛中です)を登ったりしています。
今の時期は、とにかく爽やかで、さまざまな色の若葉と綺麗な花が咲いていて、特によく晴れているときは、新緑や花が青空に映え、素晴らしい景色に囲まれ幸せな気持ちになります。
それになんといっても、里山ゆえにまず人に会うことはほとんどありませんので、マスクなしで新鮮な空気を胸一杯に吸いながら、自然に触れ合うことができます。
ここ数日は、野イチゴが食べ頃になってきて散策の途中食べていますが、これが美味しいこと。里山であればあちこちにありますので、食べたことがない方には是非お薦めです。
この新型コロナ対応では、外出をできるだけせず「ステイホーム」がすすめられ、宣言解除後も県外への移動は自粛中ですので、この里山等の散策、気持ちはいいし運動不足は解消されるしストレスも発散、こんないい過ごし方はないと私は勝手に考え実践しています。
都会に住んでいる方は、なかなかできないと思いますが、地方都市であれば、車で10〜30分ほど走れば里山はあると思いますので、このいい季節にトライしてみられたらいかがでしょうか。
ただし、注意点があります。最近イノシシの被害が多いことから、里山のあちこちに防御するための柵があり、通行できない道がありますし、日暮れ時頃からイノシシが出没することがありますので、散策道の選択と時間帯にも注意してください。また、車で里山まで行くときは、必ず迷惑がかからない場所に停車することも必要です。
今回は、ごく個人的な話題で恐縮ですが、里山散策など楽しんでいただければ幸いと思い、ご紹介させていただきました。
新型コロナの患者さんが一日も早く回復されることと、少しでも早い収束を切に願っています。
令和2年5月
一般社団法人 水産土木建設技術センター 長崎支所長 田添 伸